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不動産売却の知恵袋

不動産の税金

確定申告で欠かせない不動産を売却する際に必要な償却費の計算方法

※記事内容は掲載時点の最新情報ですので、現在改正されている可能性があります。

はじめに

こんにちは、エステートプランです!
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生します。この税金の計算において重要なのが「減価償却」です。

建物は経年劣化により価値が低下します。この減少額を取得費用から差し引くことで、課税額を減らし、支払う税金を抑えることができるかもしれません。

適切な税金の支払いのために、建物の減価償却の計算方法を理解することが重要です。この記事では、まず譲渡所得について解説し、その後、減価償却の計算方法を詳しく説明します。

譲渡所得税と減価償却の関係

不動産を売却すると、利益に応じて譲渡所得税という税金が発生します。その税金を計算する際に用いるのが減価償却です。

まずは、不動産の譲渡所得税の仕組みから解説していきます。

譲渡所得税とは、土地や建物などの不動産を売却したことによって生じた所得を譲渡所得といい、その所得にかかる税金を譲渡所得税といいます。

譲渡所得は、給与所得など他の所得とは合算せず、個別に税額を計算する分離課税方式が採用されていますが、確定申告の手続きは、他の所得と一緒に行います。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって適用する税率が異なります。

土地や建物の所有期間が、売った年の1月1日の時点で5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。不動産を取得した日(取得日)は、契約日・引き渡し日のどちらを選択しても良いことになっています。

たとえば、2014年12月4日に取得して2020年の2月1日に売却した場合は、所有期間が6年なので長期譲渡所得が適用されます。

税率は次の通りで、長期譲渡所得よりも短期譲渡の方が税率が低くなっています。

・長期譲渡所得 15%(所得税)+5%(住民税)
・短期譲渡所得 30%(所得税)+9%(住民税)
ただし現在、所得税には復興特別所得税2.1%を加算し申告・納付をすることになります。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税とは、不動産売却で得た利益に対してかかる税金のことです。
計算式は以下の通りです。

譲渡所得=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)

この譲渡所得に税率をかけて計算した額が、「譲渡所得税」です。

取得費とは

取得費は、売却する不動産を購入した際に支払った代金や仲介手数料の総額を指します。ただし、建物の場合は時間の経過とともに価値が減少するため、減価償却費用を差し引く必要があります。
【取得費に含まれる主なもの】
(1)土地や建物を購入(贈与、相続又は遺贈による取得を含む)した時に納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
(2)借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
(3)土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
(4)土地の取得に際して支払った土地の測量費
(5)所有権などを確保するために要した訴訟費用
(6)建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
(7)土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
(8)既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金

※ただし、事業所得などの必要経費に算入されたものは含まれません。

取得費の調べ方

取得費は、土地と建物では求め方が異なるため、注意が必要です。

土地は年数が経過しても価値が変わらないため、購入時の代金や手数料の合計が取得費になります。一方、建物は使用や経年によって価値が減少するため、取得費を算出する際には購入代金から減価償却相当額を引かなければなりません。

①土地と建物を一括購入した場合

建売住宅やマンションの購入時に、土地と建物のそれぞれの価格が分からない場合もあるかもしれません。その場合、契約書や領収書に記載されている消費税の額を使って、価格を求めることができます。

消費税は「消費」に対して課せられる税金ですので、土地の取引には消費税がかかりません。つまり、土地と建物を一緒に購入しても、消費税は建物の価格にだけ適用されます。

以下の計算式を使えば、土地と建物の価格を求めることができます。

建物価格 = 消費税額 ÷ 購入時の消費税率 + 消費税額
土地価格 = 購入金額 – 建物価格
消費税率は過去に何度も変動しているため、建物と土地の価格を計算する際には、購入時の消費税率を基に計算してください。

②標準建築価額から算出する

もし購入時期が古くて契約書や領収書が見当たらない場合でも、標準建物価額を使って取得費を算出する方法があります。国税庁のホームページで標準建物価額を確認し、それに基づいて計算することが可能です。

③取得費用が不明だと税額が高くなる

取得費用の計算には、①②のように実際に不動産を取得した際の金額を基にする「実態法」が基本です。しかし、もし取得費用が不明な場合には、「概算法」を用いて譲渡収入金額の5%を取得費用と見なして計算することになります。

しかし、この「概算法」を使うと必ず譲渡所得が発生してしまいます。

現在の市場環境では、購入時の価格よりも低い価格で売却するのが一般的ですので、譲渡所得税が発生しないか、発生しても少額で済むことが多いです。

つまり、取得費用がわかれば税金を軽減できる可能性があるのに対し、「概算法」を使うと税金が発生する可能性があるので注意が必要です。マイホーム購入時には契約書や領収書をしっかり保管しておくことが大切です。

譲渡費用とは

譲渡費用とは、土地や建物を売却する際に直接的に支出される費用のことです。

譲渡費用には、以下のようなものが含まれます。ただし、これらは取得費用と同様に、事業所得などの必要経費には含まれません。

(1)土地や建物を売却する際に支払った仲介手数料
(2)売主が負担した印紙税
(3)貸家を売却する際に、借家人に家屋を明け渡すために支払う立退料
(4)土地などを売却する際に、その上に建てられている建物を取り壊すときの取壊し費用とその建物の損失額
(5)既に売買契約を締結している資産を、より有利な条件で売却するために支払った違約金
(6)借地権を売却する際に、地主の承諾を得るために支払った名義書換料など

これらは売却に直接関連する費用であり、修繕費や固定資産税などの資産の維持や管理にかかる費用や、売却代金の回収に関する費用などは、譲渡費用には含まれません。

分離課税になっているのはなぜ?

譲渡所得は、他の所得とは別に申告し、合算されないのはなぜでしょうか。
その背景には、所得税の税率が関係しています。

以下は所得税の速算表です。(平成27年分以後)

課税される所得金額税率控除額
~195万円5%0円
195万円~330万円10%97,500円
330万円~695万円20%427,500円
695万円~900万円23%636,000円
900万円~1,800万円33%1,536,000円
1,800万円~4,000万円40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
※ 平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。

給与所得や事業所得を対象とした所得税は累進課税のため、所得が増えると税率も上がります。譲渡所得が独立して課税される理由は、これらの所得と合算すると、税金が過度に増える可能性があるからです。

(例)年収400万円のサラリーマンの場合、所得税率は20%です。しかし、これに加えて1000万円の不動産売却所得がある場合、合算課税だと税率が33%に、1400万円の場合は40%に跳ね上がります。

しかし、不動産の譲渡所得は一時的なものです。急激な税金の増加を避けるため、これらの所得は独立して申告されるようになっています。

減価償却の計算方法とは

減価償却の計算方法とは、不動産の売却における所得税の計算に関わるのは土地と建物ですが、減価償却は建物のみに適用されます。土地の価値は経年劣化しないため、取得費は購入時の金額がそのまま使われます。

それでは、減価償却の計算方法を説明しましょう。

減価償却は建物の取得費の計算に使われます。取得費とは、売却される不動産を購入した金額です。

ただし、先述の通り、建物の価値は経年によって下がるので、購入時の金額から経年による減価償却分を差し引く必要があります。

計算式は以下の通りです。

建物の購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率とは、建物の法定耐用年数に基づいて求められます。法定耐用年数は構造によって異なりますが、住宅などの非事業用建物の場合は耐用年数が1.5倍とされます。

現在、償却率は毎年均一な金額を減少させる「定額法」が使われています。建物の耐用年数から導かれた償却率は、以下の通りです。

マイホーム売却で知っておきたい控除と特例

マイホームを売却して利益が生じた場合、譲渡所得税の対象となりますが、特定の条件を満たす場合は、特別控除により課税を免れることがあります。

① 3,000万円の特別控除

自宅を売却した場合、最大で3,000万円までの特例控除があります。これは「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれます。

【特例の要件】
この特例を適用するための要件は以下の通りです。

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、その家屋と敷地または借地権を売ること。ただし、以前に住んでいた家屋や敷地を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること。
(注)住まなくなった家屋を取り壊した場合、次の条件を満たす必要があります。
イ その敷地の売買契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること。
ロ 家屋を取り壊してから売買契約を締結するまで、その敷地を貸駐車場などに利用していないこと。

(2) 特例を適用する年の前年および前々年に、特例やマイホームの譲渡損失に関する損益通算や繰越控除の特例を適用していないこと。
(3) 特例を適用する年、その前年および前々年にマイホームの買い換えや交換の特例を適用していないこと。
(4) 売却した家屋や敷地に対して、他の特例(収用など)の特別控除を受けていないこと。
(5) 災害などにより失った家屋を売却する場合、その敷地を住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却すること。
(6) 売手と買手が、親子や夫婦などの特別な関係(※)でないこと。
(※)特別な関係には、生計を一にする親族、売却後に同居する親族、内縁関係にある人、特定の法人などが含まれます。

実際に住んでいなくても、住まなくなってから3年が経過する年末までに売却すれば、特別控除の対象です。ただし、例えば建物の維持管理が難しいといった理由で取り壊した場合は、取り壊しの翌年までに売買契約を結ぶ必要があります。

また、土地を駐車場などに転用してしまうと、控除の適用から外れるため、くれぐれも注意してください。

② 住宅ローン控除との併用は不可

3,000万円の特別控除は節税効果が非常に高いですが、住宅ローン控除と同時に利用することはできません。新しい住宅を購入するために売却を検討している方は、これに留意する必要があります。

住宅ローン控除を適用する場合、その年とその前後2年間は、3,000万円の控除が適用されません。逆に3,000万円の控除を受けると、初年度から3年間は住宅ローン控除が適用されなくなります。

③ 軽減税率の特例

所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、3,000万円の特別控除後の長期譲渡所得額に対して、軽減税率を適用することができます。

課税長期譲渡所得金額所得税住民税
6,000万円までの部分10%4%
6,000万円を超える部分15%4%

④買換え特例

マイホームを買い替える場合、以前の住宅を売却した際の価格よりも高い価格で新しい住宅を購入すると、その譲渡益に対する課税を将来の売却時まで繰り延べることができる特例があります。
この特例を利用するには、自宅を売却した年の前年から翌年までの3年間の間に新しいマイホームを購入し、譲渡価額が1億円以下で、所有期間が10年以上、居住期間が10年以上などの条件を満たす必要があります。また、2年以内に「3,000万円の特別控除の特例」や「軽減税率の特例」を受けていないことも条件となります。

まとめ

不動産を売却して譲渡所得が発生した際に、課税額を計算する上で忘れてはならないのが減価償却費の算出です。 建物の価値は年数が経つほど下がります。購入当時の取得費を割り出して減価償却費を計上することは、節税対策の必須ポイント。適正な納税額となるよう、正しく確定申告を行いましょう。

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