大規模修繕がマンション売却に与える影響とは?売却のタイミングの見極め方
目次
はじめに
マンションを売却する際には、大規模修繕工事のタイミングについて注意が必要です。
なぜなら、大規模修繕の実施はマンションの売却価格に影響を及ぼすからです。
今回は、大規模修繕工事と修繕積立金に関する基礎知識に加えて、なぜ大規模修繕がマンションの売却に影響するのか、その理由や注意点などを解説いたします。
大規模修繕工事と修繕積立金について
マンションを購入する際だけでなく、将来の売却価格にも影響を及ぼす要素、それが大規模修繕工事と修繕積立金です。しかし、この二つが具体的に何を指すのか、詳細にご存知でしょうか。
大規模修繕工事とは
マンションの資産価値を保ちながら、快適な居住環境を確保するために行われる大規模な工事のことです。通常、12~15 年ごとに実施され、設備の寿命や劣化状況によって異なります。
外壁補修や塗装、給排水管の改修、エレベーターや機械式駐車場設備の更新など、複数の工事が同時に行われることが一般的です。
修繕積立金とは大規模修繕にかかる資金
マンションの維持管理に必要な工事には、全住戸の住人が平等に負担します。しかしながら、大規模修繕の費用は高額で、各住戸ごとに都度負担するとなると大変です。そのため、大規模修繕のために月々少額を積み立てる制度があります。
これが修繕積立金です。この収支管理は、一般的に管理組合が行います。
戸建てでも分譲マンションでも、修繕費の捻出方法は違うかもしれませんが、物件の維持管理にはお金がかかるのは変わりありません。
大規模修繕と修繕積立金の値上げの関係
通常、マンションの修繕積立金は、管理組合が長期的な修繕計画を立て、将来の工事費を見積もって毎月の積立額を設定します。
しかし、計画の見込みにずれが生じたり、工事費が予想を超える場合、修繕積立金が不足してしまうことがあります。このような場合、足りない分を補うために積立額を値上げすることがあります。
大規模修繕工事を契機に、修繕積立金が増額されることは、住み続けるだけでなく、将来の売却にも影響を及ぼす重要な要因です。
その背景にある理由について、詳しく見てみましょう。
① 適切な長期修繕計画を立てていない
通常、マンションは管理組合によって長期修繕計画が決められます。
この計画では、将来的に必要な修繕積立金の予測が行われ、例えば「10 年後に 1,000 万円程度の資金が必要」と判断されれば、それに基づいて月々の積み立て額が決定されます。この計画に基づいて維持管理が行われることが一般的ですが、後に修正されることもあるかもしれません。
しかしながら、中には適切な長期修繕計画が立てられていないマンションも存在します。
この結果、十分な積立額が設定されず、大規模修繕が必要な状況でも、「修繕積立金が不足する」という状況が生じる可能性があります。
➁ 築年数が進むほど、修繕工事費が増加する
マンションは経年により必要な修繕工事が増加し、それに伴い費用も増えていく傾向があります。これにより、毎月の修繕積立金も、新築時に比べて徐々に高く設定されることが通例です。
しかし、築年数に応じた積立金の計画が不足していたり、適切な増額が行われなかったりすることで、長期的な修繕計画に欠陥が生じるケースも見受けられます。これにより、修繕積立金が不足し、急激な増額を余儀なくされる可能性も考えられます。
③ 修繕積立金が底をついてしまう事態
修繕積立金は、長い期間をかけて積み立てられるだけでなく、急な修繕工事にも充てられる予算です。
したがって、一度の大規模修繕工事ですべての積み立て資金を消費してしまうと、その後の修繕に十分な資金が残らないため、不足分をカバーするために積立金の増額が行われることがあります。
また、大規模修繕工事に修繕積立金が対応しきれない場合、住民から臨時徴収する必要が生じることもあるため、注意が必要です。
マンションの売却と大規模修繕、価格とタイミングの影響
① 修繕積立金の増額が売却価格に影響する
マンションの売却に際して、修繕積立金の増額は購入者にとって懸念材料となります。
なぜなら、高額な修繕積立金は月々の支出を増やし、それが売却価格の引き下げにつながる可能性があるからです。
例えば、3,000 万円の分譲マンションの住宅ローンの返済に加え、修繕積立金が 1 万円の場合と 2 万円の場合では、購入者にとっての負担が異なります。
高い修繕積立金は、売却価格を抑えざるを得なくし、マンションの魅力に影響を及ぼすかもしれません。
② 積立金の不足が購入者への不安につながる
購入者にとって、将来の大規模な修繕に備えた積立金の残高はとても重要です。
積立額が不足している場合、修繕費用を賄うために月々の修繕積立金の増額や臨時徴収が必要になるかもしれません。これは購入者にとって不安材料となります。売却に際して、積立金の額だけでなく、現在の積立金の残高も確認することは重要です。
修繕積立金が増えると、毎月の支出も増え、将来の売却において不利な要因となる可能性があります。その結果、マンションの売却価格を引き下げることが避けられなくなることがあるのです。
③ マンション売却のタイミングと大規模修繕工事
マンションの売却を検討する際、大規模修繕工事が実施される前が最適なタイミングです。大規模修繕工事後は、積立額が急激に減少し、修繕積立金の増額の可能性も高まります。そのため、売却を考えるのであれば、大規模修繕工事が行われる前に検討することが賢明です。
大規模修繕の時期と修繕積立金の額を事前に確認するためには
では、大規模修繕の時期と修繕積立金の額は具体的にどのようにすれば確認できるのでしょうか。
① 長期修繕計画を確認する
最初に、長期修繕計画を確認しましょう。
通常、マンションを購入する際には、管理組合から提供される文書に、大規模修繕の予定、修繕積立金の金額、増額のスケジュールなどが詳細に記載されています。
ただし、管理組合によって積立額が異なることもあれば、長期計画が立てられていない場合もあります。
② 前回の大規模修繕の時期を確認する
次に、前回の大規模修繕の時期を確認しましょう。
大規模修繕のタイミングは、前回の修繕が行われた時期からある程度予測できます。大規模修繕の頻度は通常一定ですので、前回と前々回の工事の間隔を調べることで、次回の修繕の予定タイミングを大まかに予測することができます。
ただし、物件の具体的な状態により変動することがあるため、これはあくまで目安です。
③ 修繕積立金のガイドラインを確認する
大規模修繕に必要な金額は、国土交通省が発表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で把握できます。
このガイドラインによれば、床面積あたりの平均修繕積立金が示されています。公的なガイドラインと比較して、現在の修繕積立金が妥当かどうかを確認することが重要です。
もしも積立額が不足している場合、将来的な増額が検討されるかどうかを確かめましょう。これらの方法を用いて、売却前に重要な情報を入手し、スムーズな売却に備えましょう。
まとめ
今回のコラムでは大規模修繕工事と修繕積立金がマンション売却に与える影響について解説しました。
マンションを所有する際、大規模修繕工事の必要性は避けて通れません。
長期修繕計画がしっかりと立てられ、適切な修繕積立金が確保されていれば、安心して住まいを楽しむことができます。しかし、その逆の状況についても検討する必要があります。修繕積立金の不足が問題となり、売却時には価格を下げざるを得ない事態に直面する可能性があることを意識しておきましょう。
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