西向きのマンションの部屋は売却に不利か？方角ごとの利点と欠点

はじめに

マンションを購入する際、多くの人々は日当たりの良さを重視します。そのため、南向きの部屋は人気が高く、西向きの部屋は人気が低く、売却時に価格が低下する傾向があると言われています。

しかし、西向きの部屋には他の方角にはない利点も存在します。
今回は、マンションの方角ごとの利点と欠点を再確認し、売却が難しいと言われる西向きの部屋に焦点を当て、売却方法を解説します。

マンションの方角ごとの価格と特徴

マンションの方角によって、同じ間取りでも売却価格に差が生じることがあります。そこで、なぜそのような差が生じるのか、方角ごとの特徴を確認しましょう。

方角による価格の違いはどの程度か？

マンションを選ぶ際には、日当たりの良い方角の部屋が人気であり、採光が不足する部屋は敬遠される傾向があります。

そのため、リビングにある大きな窓やバルコニーがどの方角を向いているかによって、部屋の査定額や人気に影響が出るのです。

方角によって価格がどの程度異なるのか、同じ間取りと階層であるが部屋の方角だけが異なる場合に価格の変化を見てみましょう。

リビングの日照時間が最も長い南向きを 100％とした場合、一般的には部屋の向きによって価格相場は次のように変わります。

・南向き……100％

・東向き……93～97％

・西向き……91％～95％

・北向き……80％～90％

日当たりの悪い北向きよりも、西向きのマンションの方が高値で売却できますが、条件のほとんど同じ東向きよりもやや安い価格で売却される傾向があります。

ただし、周辺の建物の影響を受けずに採光が良く、眺望が良い「高階層」や、2 方向から光を取り入れることができる「角部屋」といった人気の条件が加わると、価格も高くなっていきます。

それでは、方角によるメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。

南向きマンションの特徴

一日を通して日当たりが良いため、最も人気が高いのが南向きのマンションです。

日差しのおかげで洗濯物が早く乾き、日中は明るくて電気を使わなくても済みますが、夏場は室温が高くなりすぎたり、家具や床が日焼けするというデメリットもあります。

東向きマンションの特徴

午前中は非常に日当たりが良く、部屋全体に光が差し込み、朝を気持ち良く迎えることができます。しかし、午後になると日差しが入らなくなります。

そのため、夏は室温の上昇が抑えられて涼しく過ごせますが、冬は部屋が暖まらないため、日中でも暖房が必要です。

西向きマンションの特徴

西向きのマンションの利点は、午後からの日当たりの良さです。部屋全体に西日が差し込み、冬は暖房費を抑えることができるだけでなく、夕日や夕焼けを楽しむこともできます。

欠点は、夏の暑さです。午後に強い日差しが入り、室内が非常に暑くなるため、夏場は冷房が必要です。

北向きマンションの特徴

一方、北向きマンションの特徴は、直射日光が当たらないため家具や床がほとんど日焼けしないことです。柔らかな光が続き、仕事や勉強に適しており、景色もよく見えます。

ただし、日当たりが悪いために昼間でも照明を点ける必要があり、冬は暖房も必要です。結露や湿気にも注意が必要です。南向きのマンションと隣接していれば、相手のベランダ側と真正面で向き合っているケースもあります。

西向きマンションが売れないと言われる主な要因とは？

西向きは不人気で、なかなか売れないという声を耳にすることがあります。避けられる原因はどこにあるのでしょうか？

① 夏の暑さ
西向きマンションが売れない主な要因は、夏の暑さが挙げられます。太陽が西に傾き始める午後から、西日が直接入るため室温が上昇します。外壁に蓄えられた熱も室内を暖め続けるため、夜でも冷房が必要です。

② 家具や床が日焼けする
午後の強い日差しによって西向きのマンションは、部屋の奥まで光が差し込んできます。
長時間日に当たるため、家具や床が日焼けすることもあります。

西向きマンションが好まれる要因とは？

西向きのマンションを敬遠する人もいますが、むしろ西向きを積極的に選ぶ人もいます。

① 冬場は暖かい
西向きマンションが好まれる要因としては、冬場の暖かさが挙げられます。夏の暑さとは対照的に、冬は午後からの日差しが室温を上げ、日没後も暖かさが続きます。エアコンの使用を抑えて暖房費を節約できます。

② 洗濯物が乾きやすい
西日がしっかり当たるため洗濯物が乾きやすく、午後から干しても充分乾きます。
慌ただしい朝に無理をして洗濯しなくてもよく、共働きであれば、朝干して帰宅後には取り込むことが出来ます。

③ 午後は長い時間日差しが入る
南向きマンションの人気は日当たりの良さによるものですが、朝から日没まで一日中陽が差すわけではありません。

特に夏季は、太陽の位置が北側に寄るため、南向きの場合でも日の出からしばらく経ってから室内に日が差し込みます。同様に、日没前も早い時間から室内には日差しが届かなくなります。

例えば、東京の場合、7 月上旬の日の入りは午後 7 時ごろです。南向きマンションでは日が差し込むのは午後 4 時ごろまでですが、西向きマンションでは午後 7 時前まで日が差し込んでいます。

つまり、西向きの方が暗くなるのが遅いのです。午後からは、西向きのマンションでは長時間にわたって明るい室内で過ごすことができます。

④自然光の恩恵が受けられる
このように夏季では午後 7 時ごろ、冬季では午後 5 時ごろまで、西向きのマンションでは自然光が部屋を明るく照らすことができるため、照明を使用する時間も自然に短くなります。

日の入りの時刻は地域によって異なるため、九州地方では関東地方よりも約 30 分ほど太陽の恩恵をより長く受けることができます。

西向きのマンションは、夏の暑さが不人気の主な理由とされていますが、現在ではエアコンの消費電力が大幅に抑えられている上、建物の断熱性能も向上しています。

最新のマンションでは、夏の暑さを克服できる領域に近づいているのです。

⑤リビング以外の部屋も明るい
南向きのマンションは人気のある物件であるため、開発業者は可能な限り南向きの住戸数を増やそうと考えます。その結果、南向きのマンションは通常、幅が狭く奥行きが長い住戸になる傾向があります。

細長い空間を可動式のふすまなどで区切って 2 部屋にする「2 室 1 室」という手法は、理論的には十分な採光を確保できる設計ですが、当然ながらふすまを閉めれば光は入りません。

南向きのマンションでも、明るいリビングの奥に位置する部屋は北側にありますので、暗い部屋も存在しています。
一方、西向きのマンションは、南向きに比べて人気が劣ることを考慮して、幅を広く取る傾向があります。さらに、「日が当たらない部屋がない」という設計になっていることが多いです。リビングやバルコニーの方向にだけでなく、各部屋の採光状況もしっかりと確認しましょう。

⑥美しい夕日が見られる
場所によりますが、夕方の美しい景色を楽しむことができるのは、西向きのマンションならではの魅力です。

特に、高層階や周囲に視界を遮るものがないマンションからの眺めは特別です。夕焼けや夕日に染まる空を眺めながら、癒しの時間を過ごすことができます。関東地域では、西向きのマンションからは富士山が見えるというのも、贅沢な特典です。

西向きマンションをスムーズに売却するためには

南向きや東向きに比べてやや人気が劣るため、売却には不利な印象を与えることがある西向きマンション。スムーズに売却活動を進めるためには、いくつかの工夫が必要です。
西向きのメリットを最大限にアピールするために、以下のポイントに留意しながら進めましょう。

①冬に売却する
西向きマンションの最大の利点は、冬でも部屋が暖かいという点です。この利点を最大限に活かすためには、売却活動の時期を冬に設定することが重要です。

言葉よりも実際にその快適さを体感してもらえることが大切です。実際に暖かさを経験してもらうことで、利点を理解してもらい、売却を有利に進めることができます。

逆に、暑い夏場の売却は可能な限り避けることをおすすめします。

③ 内覧は午後におこなう
日差しの恩恵を充分に感じることができるのは午後です。内覧を行う際には、冬場の暖かさを実感できる午後の時間帯を選ぶようにしてください。

午後であれば、他にも「室内が明るい」「夕焼けが美しい」といった、西向きマンションならではの利点を体験してもらうことができます。

④ 「買取」を検討する
もしも売れ行きが思わしくない場合、別の手段として「買取」という方法があります。これは、専門の不動産会社が直接物件を購入する方法です。

買取専門の不動産会社は、購入後にマンションをリフォームし、新たな付加価値を生み出して価格差や利益を得ます。
実績のある会社であれば、西向きマンションの欠点である「夏場の暑さ」を上手にリフォームして解消し、魅力的な物件に変えてくれます。

立地や築年数などの条件によっては、予想以上の高値で買い取ってもらえることもあります。

まとめ

西向きのマンションを売却するには、「夏場の暑さ」だけに焦点を当てず、様々なメリットを効果的に伝えることが重要です。

例えば、優れた断熱性を持つマンションであれば、西向きならではの利点を前面に出すことで、円滑な売却が進む可能性が高まります。内覧のタイミングや季節を冬場や午後に設定し、西向きマンションの魅力をしっかりとアピールする工夫をしましょう。

マンションを検討している購入希望者の中には、西向きの物件の特徴に魅力を感じる人もいます。また、デメリットも対策次第で快適に過ごすことができるため、「住みにくいマンション」ではないことを伝えることも重要です。

西向きは売れにくいという声にとらわれず、ぜひ積極的に利点を生かして売却活動を展開していきましょう。

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