土地の境界トラブル、どうすればいい?
戸建て・土地売却前に知るべき事例と対策。
目次
はじめに
こんにちは、エステートプランです!
土地や一戸建てを売却する際、隣地との境界が曖昧でトラブルに発展することがあります。
境界が確定していない土地を売却しようとすると、隣人の車庫やフェンスが自分の土地にはみ出ていたり、またはその逆のケースも少なくありません。
隣地所有者と境界の認識が違う場合の解決方法は?
よくあるケースの対処法を解説します。
土地の境界トラブルの事例
長年良好な関係を築いてきた隣人と、土地の境界トラブルにより関係が悪化することがあります。
① 塀による境界明示があいまい
近年、土地の四隅に境界標と呼ばれる四角い杭を打ち込み、境界を明確に示すようになりました。しかし、ひと昔前までは、ほとんどの人が壁や生け垣を境界として使用していました。
曖昧な位置に建てられたフェンスを境界として使用しても日常生活には問題ありませんが、土地の一部が売却されるとなると話は別です。
境界を精査する必要があります。敷地境界線がフェンスだけだとすると、それが正しい境界線かどうかわかりません。
もともと位置がずれていたり、天災などで位置がずれたりしてトラブルの原因となる場合があります。
<事例:塀を境界とする物件でのトラブル>
会社員の A さんは、祖父の代から住んでいた家を売却することになり、敷地の境界を決める必要が出てきました。隣の家とはコンクリートブロックの壁で仕切られています。
「塀は当家が作ったもので、境界は塀の外面だ」と父から聞いていたので、隣家の土地とブロック塀が接する面が敷地の境界線だと認識していました。
しかし、隣接地の所有者である B さんに確認したところ、「塀は両家の共同出資で建てられたもので、敷地境界線は塀の中心になっている」と主張してきました。
どちらの家族もこれらの事実を裏付ける書類を持っておらず、境界が確定しないまま時間だけが過ぎてしまいました。
② 境界標を一時的に勝手に撤去
境界標は、永続性のある素材で設置することが前提ですが、下水道工事や外構工事等により一時的に境界標を移動する場合があります。
この場合、隣地の所有者立会いの下で現在の境界標を記録し、双方立会いの下で復元すれば問題ありません。ところが、施工業者の中には正しい位置に戻さないケースもあります。
境界標を移動させた形跡があると、境界標自体の信ぴょう性が損なわれ、トラブルに発展する可能性がありますのでご注意ください。
③ 境界標を移設していなかった
古くから隣家同士の仲が良く、境界線の変更には同意しているのに、境界標を動かさなかったためにトラブルになることもあります。
<事例:境界標の移設に関するトラブル>
農業従事者の C さんと隣家の D さんは血縁関係にあります。
両家の間には御影石に刻まれた境界標があり、土地の境界がはっきりしているはずでした。
しかし、D さんが土地を売却するために土地家屋調査士に調査を依頼したところ、大きな問題があることが判明。地積測量図をもとに境界線をたどったところ、実際の境界線は C さん宅側に約 5 メートルも食い込んでいるというのです。
両家の年長者に聞いたところ、次のような証言が得られました。
C さんと D さんの父親はいとこ同士であり、C さんの父親は株式投資に失敗した後、D さんに資金援助を求め、その代わりに土地を譲った可能性があるというのです。
しかし、判明したのは 50 年ほど前に分筆と合筆をしていたという事実だけで、その経緯を裏付ける書類はありません。
自分が思っていた以上に敷地が縮小されることを知った C さんは当然納得できず、「敷地の境界線は境界標が示す通りだ」と主張して訴訟を起こしました。境界確定は、裁判にまで持ち込まれることになりました。
このように、土地の境界は、当事者が合意すればよいというものではありません。将来の世代に迷惑がかからないように、境界が変更されると同時に境界標を再配置することが大原則です。
④ 隣地所有者が納得しない
登記済みの地積測量図があり、その図面に従って境界標が設置されていても、隣接地の所有者が境界の確定に納得できない場合があります。
<事例:隣地所有者が境界に納得しないトラブル>
隣接地の所有者である E さんは、古い測量図を持ち出し、これが敷地境界線の根拠だと主張してきました。しかし、現況測量図は相手方が一方的に作成した図面に過ぎず、敷地境界を定める根拠にはなりません。
また別の事例では、隣接地の所有者であるFさんが、敷地境界が設定された後は、登記時よりも自分の土地の面積が小さくなるとして、土地の境界に異議を唱えました。さらに、適切に施工された境界標があったにもかかわらず、それが一方的に設置された境界標であり、無効であると繰り返し主張しました。
登記や境界標などの客観的なデータがあるので安心だと思っていても、相手の思い込みからトラブルにつながる場合があります。
⑤ 建物が越境していた
越境とは、建物、塀、庭木等の一部が敷地境界線を越えて隣接地に侵入することをいいます。
敷地境界については両者が合意していたものの、境界線確定後に建物の一部が境界を越えていたことが判明し、トラブルに発展することがあります。
隣地に突き出た建物や塀のほか、敷地の上空を占める屋根や雨どいなども越境とみなされます。いずれにせよ、土地所有者の許可なく越境することはできず、故意ではなくても越境してしまった場合は解決する義務があります。
「屋根はどうしようもない」と思われがちですが、実は上空を建物で占有された土地は売却時の大きな負の遺産です。
これは、占有面積を建築用地に含めることができず、新築の場合その分、建築可能面積が減少するためです。
土地所有者は隣地所有者に速やかに越境部分の撤去を依頼しますが、屋根等の場合はそう簡単には撤去できません。そのため、解決にはそれなりの時間がかかります。
⑥ 所有地が接道していなかった
位置指定道路(私道)に接しているかどうかは、見ただけでは確かなことはわかりません。
公図や道路位置指定図などで道路境界をしっかりと定める必要がありますのでご注意ください。
<事例:未接道のトラブル>
会社員の G さんは、祖父が所有していた農地を整地して、新しい家を建てることにしました。所有地の前には 10 年前に建設された私道(位置指定道路)があり、これに接道した敷地の建築確認申請をするつもりでした。
しかし、工事を請け負ったハウスメーカーが調査したところ、敷地と位置指定道路との間に5 センチメートルの隙間があり、実際には接道していないことが分かったのです。
実は、ある開発業者が位置指定道路を建設する際、隣地の所有者である G 氏の祖父に同意を求めたが、頑なに断られたため、業者がやむなく 5 センチメートル幅の敷地を分筆したことが判明しました。
これでようやく道路の築造に漕ぎ着けた、という経緯を知りました。
G さんは分筆された敷地の買取を希望しましたが、提示された価格が相場の 10 倍以上で、仕方なく新築計画を断念することになりました。
⑦ 所有者がそろわない
境界確定は、すべての土地所有者の合意に基づいて行います。
土地境界の確定に大きな問題がない限り、隣地が個人所有であればスムーズに進められますが、複数人が共同所有する場合はさまざまな困難が伴います。
例えば、隣地の相続手続きが済んでいない場合や、所有者全員が遠方に住んでいる場合、交渉するだけでも時間とお金がかかります。
土地の境界トラブルの解決法
土地の境界をめぐる問題は、基本的に土地所有者と隣接地所有者との話し合いによって解決されます。
しかし、漠然とした記憶や一方的な思い込みに基づく議論では問題は解決しません。
問題解決するには、どのような準備と方法が必要でしょうか?
① 隣接地の権利関係を調査する
まずは、隣の土地の所有者を正確に把握することが基本です。
隣地の境界線について、両所有者が合意した場合に取り交わされる「筆界確認書」を作成する際は、隣家の居住者ではなく土地の所有者が対象となります。
したがって、法務局から全部事項証明書を入手し、所有者を正しく把握しましょう。
② 地積測量図を確認する
地積測量図は、土地の面積や形状、境界標の位置等を示す公的な図面です。登記等の際に添付され、法務局に保管されますので客観的な資料として使用されます。ただし、1960 年から登記申請に必要な書類となりました。
制度が始まった頃は測量精度が低く、誤差が生じることも珍しくありませんでした。そのため、訴訟に耐えうる正確なデータは、2006 年に座標値の記載が義務付けられた後のデータです。
さらに、2008 年からは世界測地系データという世界共通の測量法を用いて図面を作成し、工事などで境界標が外れたりずれたりしても、非常に高い精度で再現することができます。
③ 地積測量図と境界標を照合する
最近の地積測量図の精度は高いとはいえ、図面だけでは土地の境界を隣地の所有者に納得させることはできません。
地積測量図通りに境界標が実際に存在すれば、土地の境界を確認することができます。
不動産登記規則第 77 条には、「現地に境界標があるときは地積測量図に記録しなければならない」と規定されています。
境界標は石、コンクリート、合成樹脂や錆びない鋼製など、固くて永続性のある材質を用いることが定義づけられています。
木製の杭や中空のプラスチック製の杭は、耐久性がないため、境界標として使用できません。
敷地内にしっかりとした境界標があり、地積測量図と一致して初めて敷地境界線の説得力がうまれます。
④ 事前に境界標を確認しておく
土地の境界立会いにぶっつけ本番で臨むのは避けましょう。
境界を確定する必要が生じた場合は、事前に地積測量図から境界標の有無を確認する必要があります。
もし食い違いがある場合は、土地家屋調査士に相談し、その理由をしっかりと把握した上で隣接地所有者と協議してください。
こうすることで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
⑤ 筆界確認書を作成する
立ち会いにより境界が確定したら、土地家屋調査士が作成した「筆界確認書」を 2 部用意し、当該土地所有者と隣地所有者が記名、捺印し、お互いにこれを保管します。
ここまでくれば、土地境界問題は何事もなく解決するでしょう。
⑥ 日頃のコミュニケーションも大事
土地境界トラブルでは、境界確定の確固たる証拠があるにも関わらず、隣地の土地所有者が根拠のない問題点を指摘し、確定を拒否し続ける場合があります。
境界標に正当性があれば、訴訟で解決する方法もありますが、そこに至るまでには多大な時間と労力がかかり、結果として大きな不利益を被ることになります。こうしたケースの多くは、日頃のコミュニケーション不足にも一因があります。
感情的な対立が土地売却の邪魔にならないように、普段から良好な関係を築いておくことが重要です。
筆界特定制度で筆界トラブルが解決できる
筆界のトラブルを解決する方法の一つに、筆界特定制度があります。
時間のかかる裁判ではなく、法務局の手続きを通じて筆界トラブルの解決を目指す制度です。具体的な制度の内容をみていきましょう。
① 筆界調査委員の調査
土地所有者が筆界特定制度の活用を申請すると、土地家屋調査士や弁護士などで構成される筆界調査委員が調査を進めます。
ここで取りまとめられた調査結果や見解に基づき、最終的には法務局の特定筆界調査官が筆界を特定します。
筆界調査員は、法務局や地方公共団体に保管されている調査対象の筆界に関する資料を用いて現地調査や測量調査を行い、関係者からのヒアリングを経て公正な解決を図ります。
② 裁判よりも早く解決できる
筆界特定制度が始まったのは 2006 年からです。
それ以前は、筆界トラブルは裁判所で解決していましたが、裁判はどんなに小さな土地トラブルであっても、判決が出るまでに長い年月を要し費用も高額でした。
それに比べて、筆界特定制度を利用した場合、申請から解決までの平均日数は 10 ヶ月から1 年程度です。裁判よりも早い解決が期待できます。
③ ただし所有権の解決にはならない
筆界特定制度は、筆界を確定することを目的としており、土地所有の範囲を特定することはできません。
なので、所有権と筆界の食い違いから生じる所有権争いは解決できません。
まとめ
・私たちは日常生活の中で隣地との境界を意識することも、問題が生じることもありません。しかし、隣地との境界があいまいだと、土地の売却を検討する際に大きな問題があることが発覚し、トラブルに発展することも多々あります。
・土地の売却が進むと、待ったなしの状況になります。そのため、境界トラブルで悩んでいる場合ではないと、渋々相手の言い分に耳を傾け、早く解決しようとする傾向があります。
つまり、売却直前に土地の境界確定を行うと、土地所有者に不利益を与える可能性が高くなります。
・現在自分の土地の境界がはっきりしていない場合は、土地の売却を考え始めたらできるだけ早く解決に向けて動き出す必要があります。不本意な妥協を避けるために腰を据えてじっくり取り組みましょう。
・土地を売却する予定がない場合でも、地積測量図と自宅の境界線が一致しているか、一度確認することをお勧めします。
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