ヨーロッパ滞在回想録vol.2 ~イギリス編~
英国で何が辛かったかというとやはり食事だ。
英国に関心のある方は、おそらく一度はフィッシュ&チップスという食文化を耳にされたことがあるだろう。若かった私でさえも、かなり不健康食としか思えないほどに油ぎった食べ物で、食文化といえるのかどうかはわからない。
白身の魚に小麦粉をまぶして揚げただけで、チップスもただのジャガイモの素揚げしたものに、塩と酢をかけただけの食事である。あれを多くの英国人が好んでテイクアウトして食べているようだが、私には週一度くらいが限界だったので、チャイニーズのテイクアウトが日々の主食で、時々食したインドカレーとナンは格別であった。
そんな中で、人生で初めて目にしたのが、トルコ人が提供していたケバブだ。衛生的な疑問点はあったもののこれがやたら美味しくて、想い出の食として脳裏に刻まれており、今でもケバブの店舗を見かけるとつい立ち寄ってしまう。
「英国料理」という言葉をあまり耳にすることないように、事実、英国にそういう食を自慢できるような文化は存在していないように思える。
英国の見知らぬ爺さんから怒鳴られる
回想するとあまり良い想い出がないことに気が付いてきている(笑)のだが、強烈に覚えていることが一つある。
ある時、道端でいきなり高齢の男性に後ろから肩を掴まれて止められた。彼は、驚く私に対して凄い形相でこう言った。
「俺は、戦争で日本軍の捕虜となって、強制労働等でもの凄く辛い仕打ちを受けた。日本人を絶対に許さないと。」
正直、私たち世代は戦争を知らないので、あまり実感がなかったのだが、彼に会ってからテレビや映画で観たことが本当にあったことなのだと感じることのできる、とても貴重な経験となった。
我々日本人は、過去に英国と戦争しているので英国国民の日本人に対するイメージはかなり悪いようだった。
当時、20歳そこそこの自分よりも若い酔っ払いの連中に「チンキ(チャイニーズを差別した呼び名)」と罵られたものだ。
英国といえば、紳士の国というイメージを持たれる方が多いようだが、それは日中の姿であって、週末のパブで酒を飲み始めると一気に豹変する者たちが多かった。
まあ酒が入ると気が大きくなって、人が変わったようになるのは世界共通のことだろう。
次回は、私の英国人男性に対するイメージが一気に変わるきっかけにもなったイギリス郊外のパブで出逢ったとても素敵な男性の話をするとしよう。
つづく