修繕積立金や管理費を滞納していてもマンションを売却することはできますか?
目次
はじめに
こんにちは、エステートプランです!
マンションの購入者は、月々の管理費と修繕積立金の支払いが義務付けられています。これらは日々の管理や大規模修繕などに使われる大切な資金ですので、マンション所有者全員が平等に負担する必要があります。
収入減などの事情で、もし管理費等が払えなくなった場合は?
また、滞納したマンションを売却することは可能か?
ということについて、このコラムでは解説していきます。
マンションの管理費・修繕積立金とは
管理費とは、マンションの入居者が日常生活を安全かつ快適に過ごせるように、建物や敷地などの共用部分を管理するための費用です。例えば、廊下やゴミ置き場の清掃、エレベーターや自動ドア、給排水設備の保守点検、共用部の電気代などに充てられます。
修繕積立金とは、マンションの経年劣化に備えて、外壁塗装や屋上の防水などの修繕にかかる費用を、あらかじめ積立てておく定額の積立金です。
大規模修繕は多額の費用がかかるため、長期にわたって計画を立てて積み立てする必要があります。
管理費や修繕積立金は、資産価値を維持する上で欠かせない費用です。そのため、長期滞納者が一部でも出てくると、マンションの適切な維持管理・修繕ができなくなる可能性があります。
このような事態を未然に防ぐため、管理組合は滞納者に督促を行いますが、それでも支払われない場合は法的措置を含む厳重な措置をとります。
意外と多い管理費・修繕積立金の滞納問題
滞納は珍しいケースと思われがちですが、実は珍しいことではありません。
実は、滞納者を抱えている管理組合は意外に多いのです。
国土交通省の「平成 30 年度マンション総合調査結果」によると、過去 1 年間に発生したトラブルの 25.5%が「費用負担に関するもの」で、そのうち 23.9%が「管理費等の滞納」でした。
全体の割合で見ると、管理費等の滞納に問題がある管理組合は 100 件あたり6 件になります。
管理費等の滞納増加の背景
管理費や修繕積立金の滞納の背景には、景気後退や雇用情勢の悪化が大きく影響していると考えられます。
無理なく払える住宅ローンを組んで購入したはずが、収入が減ったり失業したりと、思わぬ事態に陥るかもしれません。資金繰りの悪化で管理費や修繕積立金が滞っている場合、住宅ローンの返済も滞っている場合が多いです。
住宅ローンの場合、1 回でも滞納すると金融機関の担当者から督促の連絡が入りますが、管理費などを滞納しても、すぐに管理組合から厳しい督促状が届くというわけではありません。そのため、滞納や延滞に罪悪感を感じないケースもあるのです。
一方で、管理費等の滞納は、マンションの管理に支障をきたす深刻な問題となっており、近年では滞納者に競売を申立てる管理組合が増えてきています。
マンションの管理費・修繕積立金は、滞納するとどうなる?
では、実際にマンションの管理費や修繕積立金を支払わないとどうなるでしょうか。主に以下の段階を踏んで進みます。
1.管理組合が滞納者に電話または書面で連絡
2.滞納が続く場合は、内容証明等を添えた支払督促が届く
3.それでも対応しない場合は、口座の差し押さえや競売により滞納金を回収する法的措置がとられることもある
・滞納後に取られる措置
滞納の場合、管理組合は以下の手続きをとります。
① 理事会での報告
管理組合は、理事会で滞納の事実を報告し、対応を協議します。
初めは電話や書面で請求を行いますが、金額が膨らんだ場合や、滞納者が悪質な場合は法的手続きを検討します。
理事会のメンバーは基本的にマンションの居住者ですので、滞納は住人に伝わります。滞納者の家族は非常に気まずい思いをするでしょう。
場合によっては、子どもにも文句を言われるなどの影響が及ぶこともあります。
②総会での報告
年に一度ひらかれる総会では、滞納が報告され、出席した区分所有者に法的手続きを進めるかどうかについて意見を求める場合があります。
③管理組合の法的な対応
多額の金額の場合や長期間滞納している場合は、管理組合が弁護士を選任し、訴訟を提起します。訴訟では、管理組合は債務名義(債権の存在と範囲を公に証明する書類)を取り、それをもとに競売にかけます。
請求額は滞納額と等しくありません。滞納の処罰として高額の遅延損害金が加算されるほか、訴訟や競売などにかかる費用も加算されるため、支払額はさらに増加します。
・滞納による競売は法的に認められている
マンションの区分所有物件は、住宅ローンの担保としているケースがほとんどです。
そのため、競売後は金融機関が優先的に債務を回収します。
管理組合は、競売を申立てても滞納されている管理費等を回収できる可能性が低いため、競売自体が認められないのが通常です。
しかし、これではマンション住民の生活に支障が出てしまいます。
区分所有法第 59 条の規定による競売は、こうした状況を効果的に打開できます。
同条では、管理費・修繕積立金の回収が著しく困難な場合には、管理組合は、その区分所有者が所有する区分所有建物の競売を請求できると定めており、たとえ当該マンションの抵当権が資産価値以上に設定されていても、競売を請求することができるのです。
競売の実施後は、区分所有法第 8 条で『旧所有者が負担していた管理費等の支払い義務を承継する』としている通り、これまでの滞納額を新しい所有者に請求することが可能です。
管理費・修繕積立金を滞納している物件は売却可能ですか?
管理費等の未払いがある区分所有者が、それを解消せずに物件を売却できるのでしょうか。
以下では、住宅ローンが完済済みの物件を例に挙げ、説明します。
①滞納した管理費・修繕積立金は買主の責任となります
区分所有法第 8 条には、『前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる』という規定があります。
この規定には、未払いの管理費や修繕積立金も含まれます。言い換えれば、新たな所有者となる買主は、前の所有者が未払いとしているこれらの費用を支払う義務があるということです。
②売却時に重要事項説明で、滞納がある事実を告知しなければならない
したがって、物件を売却する際には、未払いの管理費等の事実を重要事項説明で告知する必要があります。この事実を秘匿して売却すると、法的措置が取られる可能性があるため、注意が必要です。
また、買主は過去の未払い管理費等を支払う負担を負うことになります。そのため、売却価格から未払い額を事前に差し引いて売り出すことが一般的です。
未払いがあるからといって物件が売却不可能というわけではありませんが、未払いのある物件は評判が悪く、購入希望者が減る傾向があります。したがって、売却価格を大幅に下げる可能性があることも考慮すべきです。
また、買主側も中古マンションを購入する際に、未払いの管理費や修繕積立金がないかを事前に確認することが重要です。
管理費を滞納してしまった際の対処法
管理費の未払いが続いた場合、最悪の事態として競売にかけられる可能性があります。こうした事態を回避するために、どのように対処すべきか見てみましょう。
放置は避けましょう
未払いを続け、督促にも応じないのは絶対に避けるべきです。
滞納を放置したまま連絡もとらない場合、管理組合は法的手続きを進め、競売が行われる可能性があります。このような状況を避けるためには、早急に対処することが重要です。お金が手に入ったら連絡するなど、忙しいからと先延ばしにしないよう心がけましょう。
返済の意思を示す
最初に行うべきことは、管理組合に謝罪し、未払いの理由を説明し、返済する意思を伝えることです。
管理費や修繕積立金の債権者は、同じ建物に住む住民であり、誠実な姿勢で返済意思を示すことで、ある程度の猶予が得られることがあります。住宅ローンの滞納とは異なり、法的処置を受けるリスクを軽減できるでしょう。
出来る限り返済する
管理組合が経済状況を理解してくれた場合、少額でも返済を続けることが大切です。
全く返済しないまま延長を懇願するのではなく、例えば2ヶ月に1回は支払う、滞納額を徐々に減らすなど、できるだけ返済を継続する姿勢を示すことが重要です。これにより、未払いの解消に真剣な意思があることを示すことができます。
任意売却を検討する
管理費や修繕積立金の返済が見通せない場合、マンションの売却を考える必要があります。住宅ローンを完済している場合、自主的に売却することができます。
住宅ローンの残債がある場合は、抵当権の関係から自由に売却することが難しいため、任意売却を検討することが必要です。
市場価格より競売は安価になる
競売では市場価格より低い価格で取引されることが多いため、住宅ローンの返済だけが残ることもあります。
任意売却は一般の不動産売却と同じ方法で行うことができるので、ローンの残債がある場合に適した方法です。ただし、任意売却には専門知識が必要であり、金融機関との交渉も必要ですので、不動産会社に相談することが重要です。
任意売却した後に残債を返済する
マンションの売却代金が、住宅ローンの残債と滞納された管理費などの総額を上回る場合、債務は解消されます。
ただし、売却代金が債務を下回る場合、未払い残高の返済方法について債権者と調整が必要です。任意売却の場合、この課題が浮上することもありますが、競売よりも高い価格で売れる可能性があるため、このメリットを最大限に活用することが重要です。
この点を考慮して、競売を避けるためにできる限りの努力をしましょう。
まとめ
住宅ローンの未払いと比較して、マンションの管理費や修繕積立金の未払いは、早急に督促が来るわけではありません。しかし、油断すると債務が膨らみます。
督促を無視し続けたり、滞納を長期間にわたって放置すると、最終的には管理組合による競売の申し立てが考えられます。先延ばしせず、できるだけ早く管理組合に状況を説明し、返済計画を協議しましょう。
状況によっては、一定の猶予を得られるかもしれません。
それでも、管理費や修繕積立金を支払わない選択肢はないため、少額でも着実に返済を続けることが不可欠です。滞納解消の意思を示すことで、最悪の事態となる競売を回避する道が開けるでしょう。
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